アジア経済統合論

〜激動する世界の中でアジアビジネスに影響する新たな経済統合の動きを探る〜

 

 

 

 

 

講義概要

企業のアジアビジネスに大きく関わるTPP11やRCEPなどの経済連携の動きを探る

習得目標

アジアの将来に影響を及ぼす経済統合の概念、現状を理解できる基礎力

カリキュラム

第1回 | 経済をみる際の前提となる自由貿易論および国際通商体制について論じる

第2回 | FTAおよび物の貿易、サービス貿易、投資などのルールと自由化について

第3回 | ASEAN、日本、中国など主要国地域の経済統合へ取り組みと実態

第4回 | TPP11およびRCEPに代表される新たな経済統合の内容と意義

第5回 | 保護主義、米中貿易摩擦の激化とアジアの経済統合の展望

担当講師

石川 幸一 | Koichi Ishikawa

ジェトロ、国際貿易投資研究所を経て2005年4月から2019年3月まで亜細亜大学アジア研究所教授。専門分野はASEANの経済統合、アジアの経済連携。主要共著書に、「ASEAN経済共同体の創設と日本」(文眞堂)、「アジアの開発と地域統合」(日本評論社)、メガFTAと世界経済秩序(勁草書房)など多数。アジア市場経済学会副会長、ASEAN研究会幹事、国際貿易投資研究会幹事。

思い出に残っているアジアでのエピソード

1980年のASEANの急速な工業化と日本の協力、日本企業の投資、1990年代の中国華南への投資ブーム、1997年のアジア通貨危機とその後の回復などの激動を実務者として現場で体験することができました。当時は無我夢中で対応していましたが、後で振り返るとアジアの飛躍的な発展の契機となった出来事でした。21世紀に入ってからのアジアの経済統合の動きである、ASEAN経済共同体、TPPそしてRCEPなどは亜細亜大学で専門家、企業の方々、政策担当者からご教示を受けつつ研究をすることができました。これらはアジアと日本の将来に極めて大きな影響を与える動きであり、こうした機会が得られたことに感謝しております。

講義への想い

2つのことを重視しています。一つは基本的な考え方を押さえることです。今世界は、米中貿易戦争やコロナ禍に直面しており、一部では保護主義的な政策が採用され、反グローバル化の主張や動きも目立ってきています。こうした時こそ国際ビジネスのベースにある基本的な考え方を踏まえた視座を持つことが重要です。次に新しい動きや考え方を取り上げるようにしています。米中貿易戦争と大国間競争への発展、RCEPの締結とアジアの経済連携、安全保障と自由貿易、グローバル・バリューチェーンなど時間の許す限り触れていきたいと考えております。

受講生へのメッセージ

アジアは2050年には世界経済の5割を占めると予測されています。21世紀はアジアの世紀なのです。一方、日本のシェアは現在の6%からさらに小さくなり、中国だけでなくインド、さらにはインドネシアにも抜かされるとの予測もあります。世界で2位だった豊かさ(一人当たりGDP)は世界で26位、アジアでも6位に低下しました。日本の地位低下は残念ですが、アジアとの交流ではこの事実を認めることが出発点となります。日本はアジアの唯一の経済発展に成功した国あるいは特別な国ではなく、アジアの多くの国の一つであり、日本とアジアは対等なパートナーです。そして、日本の発展はアジアとの連携と相互協力にあり、アジアについて学ぶことはますます重要になっています。